風来人ツアーレポート ◆いつまでも残しておきたい世界の森~タスマニア


 2月23日~3月2日(5泊8日)で、オーストラリアのタスマニア島へ福嶋先生とお客様11名で行ってきました。 今回の目的はなんと言っても2種類のナンキョクブナ(Nothofagus cunninghamiiとNothofagus gunnii)と、タスマニアの固有種。
 
 今回は散策中心のツアーのため、出発前から天気を心配しておりました。その旨をガイドさんに伝えると「タスマニアは週間天気予報どころか、前日の予報もあてにならないよ。天気予報は当日の朝見ないと。」とのことでした。 一日の中で四季があると言われるほど、寒暖差や天候の変化が多いタスマニア。ですが、今回は良い意味で裏切られました。毎日、晴れのち曇り、または曇りのち晴れの予報でしたが、実際にはどこに移動しても雲ひとつない晴天が続きました。 特に、クレイドルマウンテンが3日間晴天なことは本当にまれなことのようで、現地のドライバーさんもカメラを片手に一緒に散策へ同行するほど見事な天気でした。

晴天のクレイドルマウンテン

マウントウェリントンの頂上にて

 タスマニアは、その地形から「アップルランド」とも呼ばれています。地図を広げてみると、アップルランドと呼べるような呼べないような…、なんとなく歪な形に感じてしまうかもしれません。 一説では、タスマニアはリンゴの産地としても有名なので、その形と合わせてアップルランドとも呼ばれているそうです。
 面積は6万8000k㎡で、北海道の一回り小さいくらいです。人口は、52万人で北海道の約10分の1!(首都ホバートの人口は、22万人)
 世界一空気と水のキレイな島としても有名で、ホテルの水を飲んでも体調を崩すことはありませんでした。国土の36%が国立公園または、自然保護区でその多くが世界遺産の複合遺産として登録されています。

透き通っているダブ湖



 1日目
 日本から10時間30分かけて、メルボルンへ。
 オーストラリアは世界一検問が厳しい国の1つです。食べ物を持ち込むこと自体は、申告すれば問題はありません。 ただし、「少しくらいなら」「クッキーくらいなら」と申告せずに食べ物を持ち込むことが違法であり、その場で高額な罰金を支払わされます。皆様もお気をつけ下さい。


 2日目
 その後、飛行機を乗り継ぎ1時間15分でホバートに到着。バゲージのピックアップも一箇所のみの小さな空港でした。 空港からホテルまでの道中は、建築中の家を含め、新しい家が何件も連なっており町が少しずつ発展している様子が伺えました。また、ホバート港では大きな豪華客船が寄航していました。 特にシーズン中(12月~2月)は大小問わずクルーズや客船が毎日のように寄航して1日~2日滞在しています。ホテルに到着後は、自由時間。私も少し時間が空いたので、ベストウエスタンホバートから歩いて10分ほどのメインストリートを散策しました。 小さなお店から、ショッピングモールまでと思っていたよりも随分お店の数や、種類が多いというのが率直な感想でした。

ホテルから見えたオーストラリアの国旗

ホテルから見える景色

ホバートのメインストリートへ向かう途中

ホバートのメインストリート



 3日目
 王立植物園では、通常一般公開をしていないクローン年齢12,000年のヒューオンパインと、世界最古の植物といわれるキングスロマティアを特別に見せて頂きました(国内外問わず、上記2点をツアーなどへ公開したのは初めてとのことでした!)。 公園に入るまでの道中にも、日本では見られない植物が点在しており、20分くらいかけて入り口に到着。

王立植物園・クローン年齢12,000年のキングスロマティア

王立植物園内

後ろ髪を引かれながらも王立植物園を後にして、向かったのはボノロング野生動物園。一般的な動物を公開・展示する動物園とは異なり、保護するのが目的の動物園です。
 私たちを迎えてくれたのは、2歳の女の子のウォンバットでした。彼女のお母さんは、車に轢かれてしまい、まだ赤ちゃんだった彼女はこの動物園で保護されることになりました。 係員の腕の中で気持ちよさそうに眠るウォンバットですが、3歳を過ぎれば野性の本能が目覚め、縄張り意識を持つようになり係員を攻撃し始めるそうです。すなわち、自然へ帰る準備が出来た合図です。 この動物園では、95%の動物が自然に帰ることが出来ているそうです。
 ウォンバットの他にもオーストラリアを代表するコアラ、カンガルー。また、タスマニアを代表する世界最大の肉食有袋類のタスマニアデビルにも会うことができました。

おとなしく係員に抱かれるウォンバット

世界最大の肉食有袋類 タスマニアデビル

写真目線のカンガルー

1日20時間寝ているコアラが起床中

 そして、いよいよ今回のツアーの大きな目的であるナンキョクブナを見に、タスマニア最古の公園・マウントフィールド国立公園へ。
 こちらの公園では、常緑の小さな葉を持ったナンキョクブナNothofagus cunninghamiiを見ることが出来ました。他にも、70m級のユーカリ(スワンプガム)が生茂るトールツリー遊歩道を散策。 ナンキョクブナのみならず、ナンキョクシダ、サッサフラス、ブラックウッドの樹木も見ることが出来ました。途中、名所のラッセルフォールズなども見学しました。

高く伸びる木々

ナンキョクブナの一種Nothofagus cunninghamii

園内は滑らないように、ワイヤーを張っている

ラッセルフォールズ

倒れた木はそのまま残されている



 4日目
 ホバートを代表するマウントウェリントン(標高1271m)では、標高差によって異なる植生を観察しました。 標高が低い所は、ジャングルのように色々な木々が生茂り、太陽の光を求めて空高く伸びていました。そこからは、標高が高くなればなるほど木の本数は減り、高い木も減り、最終的には風や寒暖差に耐えうる身長の低い木々が風の向きに沿って生えていました。
頂上からはホバートの町並みを一望できます。デッキや新しい展望台、簡単な散策道もあります。港町からわずか(車で)30分程で標高1,000m越えの山へ行ける町は世界でも珍しいでしょう。

標高400m付近

標高700m付近

標高1000m付近(スノーガム)

マウントウェリントンの頂上にある新しい展望台

マウントウェリントン頂上からのホバート市内の眺め

 ホバートを後にし、1820年代~30年代の建物が多く残るリッチモンド、オーストラリア最古の石橋リッチモンド・ブリッジ(1823年)や、同国最古のカトリック教会セント・ジョン・カトリック・チャーチ(1837年)を見学。 途中、ガイドさんが公園に植えられていたリンゴや洋ナシをもぎ取り始めました。「オーストラリアでは、公園などの公共の場にある木はみんなのものなのです。なので、好きなときに好きなだけ狩って自由に食べて良いのですよ。」その一言で皆様は歩きながら、果物を狩りながら、食べながら、公園内を散策しました。

セント・ジョン・カトリック・チャーチ

リッチモンド・ブリッジ

 魔女の宅急便の舞台となったと言われる小さなパン屋さんがあるロスの村。福嶋先生と共に「世界一美味しいバニラスライス」と書かれた手作り感満載の看板に惹かれ、皆様と一緒に食べてみました。上下のサクサクパイ生地の間にバニラ味のムースがサンドされています。 1人1つでは多かったので、4つに分けました。海外特有の甘ったるさは無く、見た目のボリュームに反して、柔らかいムースで食べやすかったです。

魔女の宅急便のモデルになったと言われるパン屋の外観

パン屋の店内



 5日目
モールクリーク・カルスト国立公園の中にあるマラクーパ鍾乳洞は、ツチボタルが生息していることもあり人気の鍾乳洞の1つです。壁面は炭酸カルシウムを含む水が流れ、鍾乳石、石筍などはかなり遅いペースですが現在も成長を続けています。

マラクーパ鍾乳洞1

マラクーパ鍾乳洞2

 クレイドルマウンテンに入る前の最後の村、シェフィールドへ。1980年代に村おこしの一環として始まった、あらゆる建物の壁に絵が描かれている村としても有名です。壁画に描かれている内容は、歴史や文化、雄大な自然などこの地に纏わる風景や光景が描かれています。

壁画の村・シェフィールド1

壁画の村・シェフィールド

 そして、世界遺産の中にあるということで世界でも珍しく、また人気のクレイドルマウンテンロッジに2連泊しました。野生のカンガルー、ワラビー、ウォンバット、タスマニアデビル、ハリネズミ、パディメロンなど多くの動物を見ることが出来ます。

クレイドルマウンテンロッジ

ホテルの部屋からの風景

ロッジで見た野生のワラビー



 6日目
 世界遺産クレイドル国立公園にあるダブ湖(周囲約6km)を4時間ほどかけて、ゆっくりじっくり木々を観察しながら散策をしました。アップダウンも少なく、散策路がしっかりと舗装されているため非常に歩きやすかったです。 キングビリーパイン、ペンシルパイン、スノーガム、サッサフラスなどタスマニアならではの植物にも多く出会うことができました。目的の一つである落葉性のナンキョクブナNothofagus gunniiは、広いダブ湖でも一部に固まって生殖していました。 その理由は、「氷河が削った岩石多堆積した地層の下に、常に水が流れ、湿った土壌になっている場所にしか生えていないのではないでしょうか。」というのが福嶋先生の見解でした。 また、このダブ湖のほとりで休憩した場所にもマウントフィールド国立公園で見たNothofagus cunninghamiiが落葉性のナンキョクブナNothofagus gunniiと一緒に生えていました。

雄大なクレイドルマウンテン

ダブ湖とクレイドルマウンテン

常緑のナンキョクブナ

落葉性のナンキョクブナ

 その後、クレイドルマウンテンロッジ内にある1周約1時間で整備された木道のコースのキングビリートラックを歩き、キングビリーパイン(樹齢約1500年)を見に行きました。 先ほど歩いたダブ湖と違い、一歩立ち入れば、苔むした木々が鬱蒼と茂る暗く湿った深い森。「宿泊の敷地にも、このような場所もあるのですね。」と、お客様の皆様も驚かれていました。

キングビリーパイン

キングビリートラック散策中

 この日の夕食は、メインコースの中に「ワラビーのお肉」があり、殆どのお客様が注文されていました。敷地内にも野生のワラビーは生息していますが、お料理のワラビーは飼育されたものとのことでした。 気になる味は、ビーフとラムの間の味と食感でした。少々、くせはあるものの比較的食べやすいお肉です。

ワラビーのステーキ



 7日目・8日目
 最終日も晴天に恵まれ、タスマニアの青空と緑を惜しみながら、一同は帰路へ。道中、窓から見える木々を、どこで見たか、どういう所で見たか、また名前を復習しながら、最後までタスマニアの植物を楽しみました。 ロンセストン空港も、ホバート同様にこぢんまりとしていますが新しいカフェやお土産屋さんもあります。ロンセストン空港から、メルボルン空港へ。そこからもう一回国内線へ乗り換え、シドニー空港。最後に、所要時間約9時間30分をかけて羽田空港へと戻ってまいりました。長い長い、日本までの帰り道でしたね。

最終日も快晴

 タスマニアの食事は、どれも新鮮な食材を使っていたので美味しかったです。特に、ツアーの前半ではサーモン、後半はお肉料理が多かったです。日本の鮭の切り身と違い、非常にボリュ―ミーなサーモンに思わず「これは、お肉ですか?」と訪ねる客様もいらっしゃいました。お肉料理も当然量は多いのですが、どのお肉もサラッとした脂分で非常に食べやすかったです。(タスマニアビーフのフィレ肉のステーキは、特に絶品でした!)また、多くのお客様が感動してらっしゃったのはフレッシュな野菜でした。「水道水で水洗いした野菜は危ない。」と言われる国が多い中、新鮮な野菜を食べられるのもオーストラリアの大きな魅力の1つですね。
 
 また、クレイドルマウンテンロッジに宿泊している5日目と6日目の夜に、有志の皆様で南十字星を見るために、星空観察会を開催しました。幸いにも、両日共晴天に恵まれていたので綺麗に星空が見えました。星は、植物などと違って特徴を説明することや、指で指しながら説明をするのが難しく、皆様のお話を聞いていると、それぞれが別々の星を南十字星だと認識していました。最後まで、ご自身で見た星座が南十字星なのか正解は分からずとも、皆様一生懸命その目に星空を焼き付けていました。
 
 タスマニアの名前は聞いたことがあっても、実際に行った事がある方は恐らく少ないのではないでしょうか。手付かずの大自然が多く残り、また動植物の固有種も豊富。ほんの数十メートル移動するだけで全く違う景色が広がり、新たな動植物との出会いには皆様胸をときめかせていました。旅慣れた方も、海外旅行が初めてな方も、オーストラリアに何回も行かれている方にも、どなたにでも楽しんで頂けるタスマニア。是非、一度は訪ねてみてください。