添乗員ツアーレポート◆エチオピア・大地溝帯ダナキル砂漠のダロールとエルタ・アレ火山 添乗記


 想像を超える色彩で迫るダロール。剥き出しの地球を感じさせるエルタ・アレ。一枚岩を穿って作られた岩窟教会。地球上で他に類を見ない絶景を求めて人類誕生の地・エチオピアへ行ってきました。


 日本ではまだ寒さの厳しい2月中旬。夏場は暑すぎるためエチオピアは冬場が観光のベストシーズン。香港経由のエチオピア航空直行便を利用して、いざ首都のアディスアベバへ。市内の博物館で、最古の人類と言われたあの「ルーシー」とまずご対面。320万年前。 想像をはるかに超える果てしない過去としか言いようのない衝動。私たちが見ているものは骨ではなく、凝縮された時間がかたまって私たちの目の前に横たわっているようでした。

最古の人類化石ルーシー



 なぜ人類がこの地で誕生したのか、それはどんな場所なのか、エチオピアに引き込まれたような気がしながら、マイナス海抜になっている大地溝帯へと入っていきました。 マイナス海抜であることから、湿度は低いもののかなりの暑さです。この暑さが多少やわらぐ夕方までキャンプ地で過ごしてから、塩湖にやってくるラクダのキャラバンを探しに出かけ、運よく今回最初のキャラバンを目にすることができました。

塩のキャラバン

 静かに歩くラクダはゆっくりと優雅に見えますが、あの足の長さによって意外なほどに過ぎ去るスピードが速いのです。写真を撮る場合は、事前に準備をしておきましょう。


 翌日から、いよいよ本格的なエチオピア―不思議な大自然の幕開け―です。
 途中にある塩湖では、水平線を進むラクダの列に早くも大興奮。車を降りて、薄く水が張った塩湖の上に立ちます。アサレ塩湖とラクダのコラボレーションはとても日本では味わうことのできない、幻想的な雰囲気でした。

アサレ塩湖とラクダ

 さらに、車を進めてダロールの丘の麓に到着。ここから歩いて小高い丘を登ると、白化したサンゴのような不思議な塩の塊が出現。さらに進むと、それまで茶色い砂漠の単調な色合いから、一気に極彩色の光景に。 硫黄や塩、アンモニアといったさまざまな化学物質が反応してそれは見事な光景が広がっていました。これは別の惑星?映画の撮影にでも使われてもまったくおかしくないと魅入ってしまうほどの摩訶不思議な地球の絶景です。 想像をはるかに超えるものは究極的には“美しい”という感覚になってしまうのではないでしょうか。

極彩色のダロールの絶景

ダロールの塩の結晶

 その後目にしたのは、この暑く乾いた塩湖で、塩を採掘する労働者とラクダたち。
 炎天下ならぬ、“塩”天下のもとじっとして塩を積まれるのを待っています。この土地ならではの日常生活―一見すると私たちには過酷に見えてしまう―を目の当たりにし、暑さに強いとはいえ、何時間もこの場所にいるラクダも人も働きものに感じてなりません。

塩を切り出す労働者たち

キャラバンのラクダ

 暑い砂漠のキャンプ地でひと晩過ごし、次なるキャンプ地へ。
 砂漠の真ん中を車で走り抜けながら、時折信じられないような場所で生活している人に時々出くわします。大人ばかりでなく、小さな子どもまでいます。なんでこんな場所に人が住めるのでしょうか!!人間の適応能力の凄さにただただ驚くばかりでした。
 終日かけて砂漠を移動し、ようやくキャンプ地に到着。

エルタ・アレ火山に向けて

エルドムのキャンプ地



 日が沈む頃を見計らい、いよいよエルタ・アレ火山を目指して出発です。旅のお供にラクダを数頭連れていきます。優雅に歩く彼らの姿は見ていてもなぜか飽きません。4時間ほど溶岩台地を歩き、巨大な火口縁に到着。遠くに巨大な松明のような明かりが見えました。
 「あの中はいったいどうなっているのか、早く近くで見たい!」数百メートル離れたキャンプ地からいったん火口へと下り、慎重に歩みを進めると、辿り着いた先にあったのは、目を疑うようなものすごい光景でした。

間近に見るエルタ・アレの溶岩湖

 「溶岩が煮えている!」これを表現するのにふさわしい形容詞が見つかりません。言葉を失うとはまさにこのことでしょう。まるで生き物のように、時折小さなしぶきを上げながら目の前で溶岩が煮えたぎっているのです。 風向きで変化し時折ツンと臭う火山ガス、とめどなくしぶきを上げる音、そして体の芯にまで届きそうな感覚を味あわせる溶岩の熱。映像でもCGでもない現実の光景。こんな世界があるのか。こんな光景を目の前で見ていていいのだろうか。 圧倒的な美しさや大地が持つ計り知れないエネルギーの迫力の前には、すべての思考が停止してしまうのだと感じるばかりでした。
 
 この日は火口縁で1泊し、翌朝もこの光景を見てから下山して現実の世界へ。世界で最も暑い土地の1つとされるマイナス海抜の大地溝帯は過酷な環境でしたが、私たちを支えてくれたのは最高のスタッフたちでした。

エルタ・アレ火山からの帰路



 広大なエチオピア。驚きはまだまだあります。
 国内線をフルに利用して、砂漠とはまったく違う環境の水で潤う巨大なタナ湖へ。30以上の島が浮かび、ペリカンが羽を休めるタナ湖は琵琶湖の5倍とも言われるほど巨大で、青ナイル川の源流となっている湖です。
 ボートで移動し半島にある修道院を見学。中世に建てられ、茅葺や円形が特徴の修道院は、内部に描かれたちょっとコミカルにさえ見えるエチオピア正教の絵画が非常に見事です。 また、タナ湖周辺にはジャカランダの並木があったり、青ナイル滝近くでは美しいブッポウソウやワニまでいました。新鮮な驚きが毎日あり、盛りだくさんです。

タナ湖の教会

バハール・ダールに咲くジャカランダ

ブッポウソウ



 そして、観光の締めくくりは世界遺産のラリベラ岩窟教会。教会といってもただの教会ではありません。巨大な岩を掘ってつくられた教会です。12、13世紀という時代に11もの教会を建設するのに、いったいどれだけの労力が費やされたのだろうかと、その信仰心の強さに驚かずにはいられません。 しかも、それぞれの教会がうまくトンネルや通路でつなげられているのです。地上に建てられた教会であればそれほどの驚きはないでしょう。しかし、これが足元にある巨大な岩をくりぬいて造られたとなるとまったく次元が異なるような気がします。 ひんやりとした空気に包まれたその内部は、外とはまるで違う別世界のような空間で、未だにその当時の空気が残っているのではないかと思えてしまいます。また、ラリベラのホテルはそのエチオピアの大地を眺めるのにぴったりのロケーションでした。

ラリベラのホテル

聖ギルギオス教会

 失われたアーク伝説が残るエチオピアの大地は神秘的で、私たちの想像をはるかに超える自然の営みと、人類のなせる驚くべき業の連続でした。過酷な環境もありますが、まさに一生のうち、一度は見ておきたい絶景がエチオピアには今も確かな形で存在していたのでした。