楠元秀一郎ガイドを先頭に山道を歩く
高尾山(599㍍)に毎月欠かさず登り、季節ごとに移ろう花々を愛でている。春はスミレやセッコク、夏にかけてはギンリョウソウ、秋はリンドウ、冬になるとシモバシラの氷柱も見ることができる。身近な低山ならではの楽しみだろう。
2024年3月22日午前9時半、京王線の高尾山口駅前に13人の男女がたたずんでいた。小学2年生の女児、80歳過ぎの高齢男性ら多彩な世代が集まった。「安心安全富士登山教室2024」(主催・まいたび)の参加者の皆さんだ。楠元秀一郎・登山ガイドが「おはようございます」とにこやかに声をかけた。参加者の登山靴やザックが真新しい。皆初心者なのだ。登山靴の履き方やザックの背負い方を伝えた後、出発した。
6号路と呼ばれる山道に入った。「ここから登山道になるので一列になってください」と楠元ガイドが話しかけた。岩や砂利の道をゆっくりと進む。水辺に咲くヨゴレネコノメを見つつ、琵琶滝から急な山道に入った。ゴツゴツとした岩が続き、その上を歩く。「ゆっくり歩きます。安定したところに足を置いてください」と声がかかった。参加者の額に汗がにじむ。休憩を挟みながら小1時間ほどかけて登り切ると、アスファルトの1号路に合流した。「こんな険しい山道がまだ続くのですか」と女性参加者がため息をついた。だが、きつい登山道はここまで。山頂まではなだらかな道が続く。そう話すと、女性はホッとした表情となった。
ヨゴレネコノメ
小野直子ガイドを先頭に登山道を歩く=2024年3月30日
午後12時半過ぎ、山頂に到着した。「山頂に着きました」と楠元ガイド。参加者は「やっと着いた」と安堵の声をあげ、山頂標識で記念撮影を繰り返した。空は青く、白雪の富士山が映える。丹沢山地の左端には大山(1252㍍)が見えた。「次はあの山に登りますよ」と伝えると、「あれが大山ですか」「高そうだな」と参加者は三角形の端正な山容を見つめた。
吊り橋で手を振る渡邊四季穂ガイドと参加者の皆さん=24年4月4日
高尾山山頂
高尾山山頂近くの草むらにはシュンランが可憐な花を見せていた。下山時にはミツマタの黄色い花、咲き始めたシャガの白い花も見ることができた。スミレの花もそこかしこで風に揺れていた。花の山としても名高い、高尾山の春は始まったばかりだ。
スミレ
高尾山での富士山教室は、3月30日と4月4日にも行われた。30日は22人が参加し、20度を超えた気温の中で、汗をかきながら歩いた。4日は薄曇りの中、11人が参加した。山頂のサクラは満開となり、登山者らを出迎えてくれた。
【小野博宣・毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ】