岡野ガイド・石井ガイドと参加者の皆さん
「卒業証書、〇〇殿......」。
2024年10月16日正午前、神奈川県秦野市の弘法山公園の広場で、まいたび所属の岡野明子・登山ガイドの声が響いていた。
登山初心者を富士山に誘う「安心安全富士登山教室2024」の参加者26人が笑顔でたたずんでいた。
いずれも今夏、富士登山に挑戦した面々であり、その努力を讃えての「卒業式」が開かれていた。
卒業式が行われた弘法山公園の広場
順調に卒業証書を読み上げていた岡野ガイドの声が突然つまり、おえつを漏らした。
感動の涙なのだろう。
その気持ちは、筆者にもよく理解できた。
参加者の皆さんが初めての登山に挑戦したのは、3月の高尾山(599m)だ。
その際は登山靴を持っておらず、運動靴で参加した人がいた。
また、新品の登山靴やザックの人も多かった。
毎月のステップアップ登山に参加するうちに、山歩きに慣れ、山道具も徐々にそろえた。
7、8月の富士登山の際は、すっかりベテラン登山者のいで立ちになっていた。
岡野ガイドの脳裏には、参加者の努力が蘇ったに違いない。
西の空に目を向ければ、笠雲を頭に乗せた富士山の雄姿が見えた。
男性参加者は「8月にあそこに立っていたと思うと、感慨深い」。
女性は「(富士山教室の)新聞広告がすべての始まりでした。『私でも登れるかな』と半信半疑でしたが、なんとか登れました」と笑顔だ。
唯一無二の富士山。
多くの人に愛される富士山。
「一度は登りたい」と思っている人は多いだろう。
だが、実際に登る人はどれほどいるだろうか。
安全登山のための装備と技術、体力を整え、果敢に富士山に挑む人の、なんと少ないことか。
集った26人は自分に挑戦し、夢を実現させた勇者であると讃えたい。
記念撮影
笑顔の花が咲いた卒業式の後は、まいたびスタッフが腕によりをかけてつくったビーフシチューとフランスパンがふるまわれた。
「おいしい」「ワインが飲みたくなるね」。
富士山に見守られながら、笑顔は幾重にも広がった。
まいたびが主催する「安心安全富士登山教室」は2016年からスタートし、多くの登山初心者を富士山に案内してきました。
2025年2月23日(富士山の日)に、富士登山の第一歩となる「安心安全登山教室2025」の机上講座を東京都内で行います。
開催場所や時間、参加要項は後日まいたびホームページや毎日新聞紙上で告知します。ぜひご参加ください。
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ・小野博宣】
●筆者プロフィール●
1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。
2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日ハイキングクラブ」前会長