雨の日に、登山やハイキングをするのはできれば避けたい。しかし、突然の降雨などやむを得ず歩かなければならない時もある。ならば、早いうちに雨の山歩きに慣れた方が良いだろう。
2025年3月29日の神奈川県は、朝から雨だった。午前10時前、小田急線秦野駅構内の広場に、登山服に身を包んだ男女20人が集まっていた。「まいたび(毎日新聞旅行)」の「安心安全富士登山教室」の参加者たちだ。
石井啓太・登山ガイドは登山靴の履き方などを話した後、レインウェアについて伝えた。
「チェックポイントがひとつあります。雨具の裏側を見てください」。参加者は自らのウェアをひっくり返した。「裏側の縫い目が目止めされているものを選んでください」「目止めされていないと、縫い目から濡れてきます」と話した。「なるほど」と頷く人々。さらに「レインウェアは袋には入れないでください。すぐに取り出せるように、ザックの中に直接入れてください」と話した。「袋に入れておくと、袋から出して...と手間取ってしまい、その間に濡れてしまいます」と理由を語った。「では、出発しましょう」と石井ガイドの掛け声で、午前11時15分過ぎに出発した。
「弘法山公園入口」と刻印された大きな看板が登山口の目印だ。一行は急傾斜の登山道に取りついた。
「段差ではしっかりと伸びあがってください。お尻の筋肉を使って登りましょう」「滑りますので木の根っこに乗らないように」「トレッキングポールは常に前についてください」。注意喚起が矢継ぎ早に飛んだ。
午後12時20分、最初の頂(いただき)となる浅間山に到着した。晴れていれば富士山の好展望地だが、雨模様で英姿は望めなかった。さらに足を伸ばして、権現山(243.3㍍)に到着した。
展望塔の下で雨宿りをしながら、昼食をとった。石井ガイドはお湯を沸かして、持参したコーヒーをふるまった。「寒い日に温かい飲み物はうれしい」と女性参加者は喜んだ。午後1時15分ごろに出立し、歩きやすい尾根道を歩いて目的地の弘法山(235㍍)へ。
道端には菜の花が咲き、黄色い花を揺らしていた。同37分ごろに山頂を踏んだ。「着きました」と石井ガイドが声をかけた。
「もう着いたのですか」「やったぁ」と参加者はうれしそうだ。山名碑の前で記念写真を撮った後、来た道を引き返し、秦野駅で解散となった。男性参加者は「夏には何としても富士山に登りたい。毎月の練習登山を頑張ります」と語ってくれた。
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ・小野博宣】
●筆者プロフィール●
1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。
2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日ハイキングクラブ」前会長