東京湾に突き出るようにそびえる鋸山(のこぎりやま、329・5㍍、千葉県富津市・鋸南町)は奇岩が折り重なるように連なり、太平洋を望む爽快な展望が得られる。江戸時代から文人墨客が足を運び、夏目漱石、正岡子規も訪れている。
ハイキングの玄関口は、JR内房線浜金谷駅となる。1日の平均乗降客数は200人そこそこの駅だが、休日になると多くのハイカーが降り立つ。2025年3月23日午前10時、駅前には「まいたび(毎日新聞旅行)」が主催する「安心安全富士登山教室」の参加者16人の姿があった。教室は3月の低山を皮切りに毎月、山に登って夏の富士山登頂を目指す。ほとんどの人が初心者ばかりだ。
JR浜金谷駅のたたずまい
石井啓太・登山ガイドが朝の挨拶とともに、「歩き始める時は肌寒いくらいの方がいい。動いていると今以上に涼しくなることはありません」と服装について注意喚起した。登山靴の履き方などを伝えた後、同50分に歩き始めた。15分ほどで内房線のほど近くにある登山口に到着した。ここからは急な階段を登りつめて行く。階段を見た参加者の表情には、困惑が広がった。「登り切れるかな」と思ったに違いない。石井ガイドはコツを伝えた。「(お尻から太ももの)大きな筋肉を使います」「片足を階段に置いたら、すっと伸ばして(立ち上がって)ください。かかしのようになってください」と伝えた。参加者は片足で立つことを意識して、懸命に登り続けた。
一段一段確実にゆっくりと 階段の登り方を伝える石井ガイド
さらに石井ガイドは、アンダーウェアについてもアドバイスをした。
「速乾性とうたっているスポーツ用品を選んでください」
「肌に近い部分にはお金をかけてくださいね。登山専用のものだと快適です」などと伝えた。
階段や登山道をゆっくりと登り、午後1時半過ぎには山頂付近に到達した。快晴の空の下、東京湾の眺めが美しい。金谷湾に入港するフェリーも見えた。しかし、春霞(はるがすみ)のせいなのか、三浦半島の向こうに見えるはずの富士山の姿はなかった。「ちょっと残念」と女性参加者は悔しそう。それぞれが昼食をとった後、下山の途についた。ロープウェー山頂駅からの眺望は雄大だ。太平洋と山頂名の看板を背にそれぞれが写真を撮り、名残を惜しんでいた。
太平洋と東京湾フェリー
浜金谷の街を一望に
鋸山名物の「地獄のぞき」
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ・小野博宣】
●筆者プロフィール●
1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。
2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日ハイキングクラブ」前会長