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まいたびブログ

毎日新聞旅行(東京)「まいたび®」公式ブログです。
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安心安全富士登山教室2025 ステップ2(立山)

2025年4月21日

山中湖周辺の山々には富士山の展望台としての魅力がある。以前、西丹沢を起点に甲相国境尾根を縦走したことがある。神奈川県から山梨県に至る尾根道を歩き、菰釣山(こもつるしやま、1347㍍)の山頂付近に立った。遠くに山中湖が広がり、富士山がすっきりとした姿を見せた。絶景に魅了され、しばらく我を忘れて見つめていたのを思い出す。
 そんな湖畔の山々のひとつに、立山(1330㍍)がある。「たちやま」と読む。不覚にも私はこの山を知らなかった。初心者向け登山教室「安心安全富士登山2025」の候補の山としてこの山名を示された時、「たてやま?」と聞き返した。登山口は山梨県山中湖村、山頂付近は静岡県小山町という。
 2025年4月17日午前10時40分、14人の参加者は登山口を出発した。ゆるい傾斜の登り道が続いた。先頭を歩く渡辺四季穂・登山ガイドが「呼吸を意識して」「細く長い息を吐いて」とよどみなく声をかけ続けた。

ネコノメソウの仲間が見られた.jpg                     ネコノメソウが咲いていた

 登山道は砂地だった。正確に言えば、富士山がもたらした降灰だ。その点は富士山の下山路とよく似ている。「下山の練習をしましょう」と渡辺ガイドは立ち止まった。「(富士登山の)3日目は延々とこれを下ります」「コツはかかとから踏みしめることです」。そう言いながら、かかとを砂地に置いた。登山靴がズブズブと沈み、さっと引き上げた。参加者も真似て何度も足踏みを繰り返した。

(モザイク加工).jpg                  富士山の砂地に見立てて下山の練習をする

 この後もV字地形の底にある登り坂を歩き続けた。左右の斜面には朽ちて折れた木々が幾本も転がっていた。「こういう地形では落石や倒木があります。富士山も一緒です。落石がいつあるか分かりません」「落石による事故も起きています。注意して歩いてください」。注意喚起が続いた。
 午前11時過ぎ、なだらかな稜線に到達した。樹林帯の中を進み、同54分、立山山頂を踏んだ。木々に囲まれて、物音ひとつしない。地味な山頂だ。一行は東に進み、5分ほどで立山展望台に着いた。目の前に白雪の富士山が姿を現した。「わぁー」「すごい」。歓声が沸いた。人々はスマートフォンを掲げて、何度も撮影した。「夏には富士山の山頂に登れるかな」と女性が言えば、男性は「ぜひ登りたい」と繰り返した。参加者の登山靴はまだ新品だ。その靴が泥や砂、雨で色あせた時、富士山の頂(いただき)に立っていることは間違いない。

山頂碑の上にかわいいオブジェが置かれていた.jpg

               山頂碑の上にかわいいオブジェが置かれていた

(モザイク加工) (2).jpgのサムネイル画像                 富士山登山について説明する渡辺ガイド

立山展望台からの富士山.jpg

                   立山展望台からの富士山

【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ・小野博宣】
●筆者プロフィール●
 1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。
2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日ハイキングクラブ」前会長